ベルリン・フィルとの四半世紀 カール・ライスター 音楽之友社
バーンスタインの足下にひれ伏したベルリン・フィル
さて十月の初めになると、レナード・バーンスタインがベルリンに
やって来て、初めてベルリン・フィルを指揮する運びとなった。
この瞬間をベルリン・フィルの団員一同と聴衆は、いかに長く
待ちわびていたことだろうか。十月二日、最初のリハーサルがあった。
プログラムはマーラーの《第九》であった。言うまでもなく、この曲は
バーンスタインが特に深い愛着を持っている作品である。
リハーサルは三日間続き、四日の夜に最初の歴史的なコンサートが
開かれた。そして翌五日にも同じ曲でもう一度行なわれた。
それは実に大きな出来事であった。もちろんカラヤンが、これまで
幾多の歴史的瞬間をこのオーケストラにもたらしたことには異論はない。
しかしここで、バーンスタインを経験したことは、私のベルリン・フィルに
おける二十五年の内でも、圧倒的なクライマックスともいえる事件であった。
バーンスタインという人は、リハーサルのうちから完全燃焼し、音楽の中に
全身全霊を没入させ、オーケストラに対して彼の全てを開いて見せる
指揮者であった。当然ながら、オーケストラに対してもそれ相当の高い要求を
課してきた。彼との共演はほんのわずかな期間であったが、オーケストラは、
彼にすっかり魅入られ、傾倒してしまった。言ってしまえば、彼の足下に
ひれ伏したと言っても良い。このときの演奏は私が経験した中でも最も壮麗な
演奏のひとつであり、マーラーの《第九》の瞑想的で重厚な終りの部分では、
生命が終りを告げ、最後の息が引き取られることが暗示された。次項に続く。