>前スレ992 名前:名無しの笛の踊り[sage] 投稿日:2016/03/14(月) 07:00:19.45 ID:mSyF2wdO
>音楽評論は文芸だと思うのですが、読むと曲の解釈が深くなって演奏に深みが出たりするのですか?
>演奏会のパンフに時々書いてある指揮者の曲解説の方がまだ役に立ちそうな…

チェロのブルネッロについて書かれた比較的新しい吉田秀和の評が、
演奏の指針として胆に銘じておくべきものとして、印象に深く残っている。

以下、『たとえ世界が不条理だったとしても―新・音楽展望2000‐2004』より引用。

その中で、私が特に興味を引かれるのは、彼(=堤剛)が演奏に当たって「音楽を形で捉えること」と「先取りの必要」を説いている点である。
彼は「ある曲を弾くとしたら、すでに最初の主題を弾く前に、そのあと何が来て、どうなってゆくか、全体とのかかわりはどうなるかを、
よく考えておかなければならない」という趣旨の内容を繰り返し主張しているが、これは大変重要な指摘である。
最初の主題の提示は勇ましかったり、美しかったりいろいろでありながら、そのあとどっちの方向にゆくのかわからないような演奏には、私もさんざん悩まされてきた。
〜略〜
ブルネッロはまさにこの堤の言葉のお手本のような弾き方をする。彼にはブラームスのチェロ・ソナタ全二曲のCDがあるが、
その《ソナタ第一番》の最初の主題の弾き方など、単に腹の底まで応える、たっぷりした低音の響きの快感云々といったことではなく、
そのゆったりとしたテンポの設定の取り方から、分散和音でひとつひとつ上昇してゆく音のそれぞれに適正な音色、強さ、漸強、減衰といったすべてについて、
計算というより、もっと全体的な音楽的思考に裏づけられた慎重さがうかがわれ、きき手に類の少ない充実した手応えを伝えずにおかないような弾き方をしている。
(pp.164-165)

cf:https://www.youtube.com/watch?v=bZHJT474Mro