>>842 世界最高のクラシック 許 光俊教授 光文社新書
第3章 普遍化を目指した指揮者たち、または二〇世紀が夢見た美
こんなやり方は、カラヤン以前にはあまりなかった。だから、カラヤン
を嫌う人たちは彼をセールスマンと呼び、商売に走りすぎると軽蔑した。
なるほど、彼は金儲けに熱心であったろう。が、ことの本質は
それだけでは語りきれない。彼は、自らの演奏を録音・録画メディア
にして世界中にばらまくことで、普遍化を達成しようとしていたのだ。
そして、実はこうした欲望は、彼ひとりに限らず、西洋文明・文化が
いろいろな分野で抱いている欲望ではなかったか。
 カラヤンは、一九八九年、ソニーの人たちと話している最中に、
突如こと切れた。まさに象徴的である。私にはその死は、布教途中の
インドや中国で死んだイエズス会士のように見える。