それでも観るべき価値のある映像作品はいくつか存在する。
その筆頭にあるのがリヒャルト・シュトラウスの『死と変容』、ドヴォルザークの交響曲第8番、第9番「新世界」であり、オーケストラから胸に迫るような響きを引き出し、
拵え物の造形美の世界から脱却していることをうかがわせる。1982年に行われたベルリン・フィル100周年コンサートで指揮したベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」も名演。
1987年8月に撮影されたザルツブルク音楽祭のドキュメンタリー『カラヤン・イン・ザルツブルク』も面白い。
これを観ると、カラヤンが79歳になっても、自分のことを毛嫌いしていたヴィルヘルム・フルトヴェングラーを意識していたことが分かる。
彼の権力志向も、結局のところ、フルトヴェングラーの亡霊との闘いを意味していたのではないか、と穿った見方をしたくなる。
また、ジェシー・ノーマンを独唱に迎えた「イゾルデの愛の死」のライヴ映像(音源もある)も収められており、その点でも価値が高い。