>>10 ベームには個性がないからね

ベーム/VPOの「田園」も,二つとない個性的な名演である。
このレコード発売時に,あのVSOとの白熱した第九を指揮したベームがどんな「田園」を演るのか,正直不安な人もいたのではないか。
だがベームはベームだった。
穏やかな丸まった「田園」にはせず,ベームのタカ派ぶりがくっきりと姿を現している。
しかもベームのその個性が「田園」の曲にうまくミックスされ,際立った名演を生んでいたのだった。
明るく柔らかな録音もさることながら,VPOの叙情的な歌いまわしが余す所なく引き出され,
それまでのどの演奏でも聞こえなかった声部が聞こえていたり,
ベーム独自の輪郭のクッキリとした楽器バランスづくりもあって,
数ある「田園」録音の中でもユニークな存在となったのだ。
これを初めて聴いた時に思わずスコアをめくったファンも少なくなかったはずである。
数あるVPOの田園の録音の中で最右翼の名演であろう。
ここにこそ,この名盤がワルター/コロンビアso.の名盤と並び称される所以があるのである。