「音程悪いね」
「よく言われるんですが、正しい音程が分からないんです。
 どうすれば『耳』って、よくなりますか?」

こういう会話を、これまで随分してきた。
左手の役目、その主たるものは「音高を決定する」ことだ。
これに不安があるのは、辛い。だから、
真剣に考えてきた。「どうすれば『耳』がよくなるのか」と。
そればかりを考え、よかれと思う対処療法を提示してきた。

でも、投げ掛けられるこの問いの回数の多さに、
むくむくと、「そもそも」が出てくる。
―そもそも、こんなに耳の悪い人が多いのはなぜか?

いや、待て。
―そもそも、みんな、本当に耳が悪いのか?

調弦をしてもらう。完璧な調弦ができる。
平均律的音階と、美しく聞こえる音階を弾いてみる。
「ああ、違う」「綺麗!」=多くの人が、聴き分けられる。
大体、他人の音程が悪いのは分かったりもする。
「あいつ、音程悪いよな」「いつも上ずってるよね」

なあんだ、そうか。耳が悪い訳じゃないんだ!
とすると、なぜ、音程が悪いのか。耳のせいではない。