>>375
でも、「ナチス的な手法」というのはもう通用しないと20世紀後半には考えられていた。
こうした政治の単純化は、教育水準が上がって価値観が多様化し、情報が増えれば、不可能になる。
単純なスローガンでみんなを支配することは、成熟した民主主義社会ではできないという考え方が主流になった。

ところが今は、世の中があまりにも複雑化して、みんなついて行けなくなってきた。
集団的自衛権にしても、自然科学にしても、学問の専門性が深まり、非常に難しい話になった。
経済なんて特にそうですよね。変数があまりにもありすぎて、
何が正しいのか、経済学者もわからないし、ましてや一般人にはわからない。
だから、共同研究をしていても、少しジャンルが違うとわからなくなって、
STAP細胞論文の研究不正みたいなことも簡単に起きてしまう。

こうして情報が過剰になった結果、相対的に人の判断力が落ちた。
専門家からみれば荒唐無稽なようなことを、みんな簡単に信じるようになったんです。
そして、それを活用する形で、小泉政権以降というのは、話のうまい人や「信用できそう」な人など、
政策に箔(はく)をつける「専門家」を利用するようになった。
ナチレベルの宣伝技術の時代に戻ってきていると思います。

だから、こういう今の世論の土壌からすると、「文化芸術懇話会」で
自民党がやろうとしたような取り組みは成功する可能性がある。
もし、与党や政権が、今回のように表に出さずに、
裏で、真面目に文化芸術を動員する方法を考えていたとしたら。
プロパガンダ芸術としてのテレビドラマや、改憲のメッセージを入れたアニメを作り、
それが「エヴァンゲリオン」ぐらい人気が出たら。
そういう「政策芸術」ができれば、今の時代にはぴったりかもしれません。

常にだれかが簡単に説明してくれることを求めているこの国では、
わかりやすいイデオロギーがあればばっと動く。
政権に作られたことがあからさまにわかる形ではなく、
おのずと全体の空気が作られるような形をとれば、
選挙でも何十%かの支持は得られるようになるのではないでしょうか。
(聞き手・守真弓)