ひとつの作品には、唯一の解釈、ただひとつの演奏しか存在しません。
つまり、その作品の持って生まれた、その作品に即したふさわしい「正しい」演奏しか存在しないのです。
したがって、ひとりよがりな個性的な美的感覚をふりかざす妙な演奏をもてはやす必要もないし、
同様に、楽譜に忠実な演奏をしておけばいいのだと安易な方法でお茶を濁すことも必要ありません。

もちろん、そうなるまでにはまず、
作品の全体をなすもの、つまり作品の生きた構造を正しく把握すること。
それを読み取るだけの力を持たねばなりません。
読み取ることができるということが、まさに演奏者にとって本当の課題なんです。