クラシックのピアニストは大抵ジャズ・ピアニストの
「芯がなくそれでいて粗暴な音色」には抵抗がある。
どんなにジャズ好きでもその部分は味わえないのである。

これは職業病であり悲劇でもある。
そういう音では私たちには音楽のもつ内容まで届かない。
だからチック・コリアのモーツァルトを楽しめる専門家はいない。
そんな職業病を超えて、良く聴こえてくるものといえば、聴いたことのない新鮮なアイデア、
それが絶妙なフィーリングで弾かれたときだろう。
例えばあのビル・エヴァンスのピアノも、「音」としては我々からすれば良くはない。
しかしそれを忘れさせる演奏がある。クラシック好きで、今私が書いたような理由でジャズが楽しめなかった人は、
ぜひこのビル・エヴァンスの「TRIO 64」を聴いていただきたい。
ここで彼が弾く「サンタが街にやってきた」は、なんと新鮮な才気に溢れ素敵なことか!
これに心が動かなかったら今度は音楽を聴く意味がない。
有名曲をアレンジする上でのバイブルのようなテイクだ。
私の個人的な好みでは繊細で楽しい「スリーピン・ビー」も好きだ。
こういう世界は、今度はクラシック演奏家からの憧れとなる。