■三枝成彰のイチ押し!

  ・・・それまで佐村河内さんのことをまったく存じ上げなかった私は、予備知識なしに
この作品を聴いたのだが、大きな衝撃を受けた。

まずは曲の素晴らしさに驚き、その後、彼のプロフィールを知ってさらに驚いた。

そして、ぜひこの作品を最終選考に残すように申し上げたのだが、そうなるには至らなかった。

曲のスタイルが新しいか古いかと言われれば、「交響曲第一番」は確かに古いスタイルにのっとって
書かれた作品かもしれない。しかし、そんなことは作品の良し悪しとは関係のないことだ。

……と思うのだが、いわゆる“現代音楽”に携わっている人たちからすれば、確かによい曲だと
わかってはいても、やはり評価は、よりコンセプチュアルで先鋭的な作品のほうへ傾いてしまうきらいがある。

しかし、選考に漏れたからといって、この作品の価値はいっこうに揺らぐものではない。それに私は、
佐村河内さんが上述したようなバックボーンを持つ人だから「交響曲第一番」がよいと思ったわけではない。

純粋にいい曲だから惹かれたのである。それはこの曲を聴いたことのある人たちなら、わかっていただけるはずだ。

 初演のときはテレビなどでも取り上げられたようだし、その前年、彼は曲のタイトルどおりの
『交響曲第一番』という自伝を出版されている(講談社刊)。これを読むと、彼のここまでの努力の積み重ねがよくわかる。

 この曲が次にいつ演奏されるかは知らないが、そのときにはぜひ駆けつけたいと思う。
彼にはどこか、私がめざす音楽と共通するところを感じる。

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