あの超スロー2楽章が好きという人は、本物のクレヲタだと思う。
当初抵抗があっても、聴いているうちにそのうち病みつきになってしまう(たしかコーホーは
ブルックナーのお化けと表現)。
一転して、速めのテンポでダレないしかし気高いアダージョもいかにも御大らしい。
ブル8に溢れるチャーミングな旋律を丁寧に心を籠めてしかし格調高く再現した85歳の老人の演奏は、
カットこそ残念なものの、永遠に続くがごとききブルックナーの音楽美に浸らしてくれる。

70年ベトチクルスの映像を見ると、四角四面、動かん殿下、専制君主のような指揮ぶりのようで、
実はプレイヤーたちに伸び伸びと演奏させていることに気づく。
「指揮者でもっとも重要なことは、彼らがあたかも自由であるように演奏させることです。
指揮者にやれることは彼らを支配することではなく、どのように演奏すべきか指示することだけです」
と述べたクレンペラーの言葉が重く響く。
身体の衰えによりコントロールを失いながらも意地だけで指揮していた、という最晩年像は間違いだと思う。