内田光子 あと、指揮者というと、皆さん、私もカラヤンの名前ぐらいは出すんじゃないかと・・・・(笑)。
  私は、じつはカラヤンで育った人間なんですよ。子供のときにウィーンでカラヤンのオペラを聴きながら育ったというのは、
  よほどぜいたくにできているんでしょうね(笑)。ウィーンヘ行って最初の三年間、カラヤンのオペラしか聴いたことがなかったぐらいですから。
濱田   で、どういうご感想を?
内田   イタリア・オペラでも、たとえば私が大嫌いなプッチーニなんて、あんなうまい人いないですよ。ヴェルディだって、あの流れのよさ、運びのうまさね。
  だから、カラヤンの振るオペラは大好きだったんです。だけど、シンフォニーとなると私は、非音楽的でわからんと思って聴いていたんです。
  後になってみても、カラヤンのシンフォニック・ミュージックは、ほとんどまじめに聴きませんね。ベートーヴェンなんて絶対聴かないもの(笑)。
  彼の世界は、指揮の技術と、ひたすらに甘美な音の世界。ところが私は、甘美な音の世界というのがわからん人間ですからね。そうすると、
  私はやはりフルトヴェングラーの世界に傾いちゃいます。でも、フルトヴェングラーと私とは、どんなに近いかと思うと、全然遠いんですよ。
  私はあんな魔性の人間じゃないもの (笑)。