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5つ星のうち4.0異物が混入した残念な宇野本
投稿者間野山泊2003年12月22日

レビュー対象商品: クラシック人生の100枚―異論・反論vs返答付 (Ontomo mook) (楽譜)
宇野氏の著書としては過去の主張との重複も多いが、いつもながら熱い文章には共感する。ただし、複数の評者が1曲を論じるというアイデア自体は、1999年刊行の『ク
ラシックCDの名盤』(文春新書)が先行してあり、しかも評者が少数(3人)ながら本書(8人)に勝る。文春版には3人の個性の衝突の魅力があるのに対し、本書は宇
野氏への1対1の反論(ときに賛同)で、迫力に欠けるからだ。しかも本書131ページには、平林直哉氏による「朝比奈さんに経緯(ママ/引用者)と尊敬を表しつつも、
やはり問題ありと言わざるを得ない」という問題箇所がある。これは、朝比奈隆のブルックナー8番に対する評価である(宇野氏はもちろん朝比奈盤を評価。推薦盤
は2001年の朝比奈逝去5カ月前の演奏)。本書の意図が、宇野氏に別の評者が異論を挟む構成であるにしても、この一節は首肯しかねる。まず、「朝比奈さんに経緯と尊
敬」とは何事か。「経緯」が誤植(私の購入したのは2刷)とすると、「敬意と尊敬」という幼稚な同義反復になり、この文章自体からは全く「敬意」も「尊敬」も感じら
れない。これは、到底「異論反論」のレベルではなく、文章家としては欠格者の妄言である。平林氏はさらに「朝比奈のブルックナーの交響曲の中で、第8番だけは“これ
だ”というものがない」とまで言い切っている。「問題ありと言わざるを得ない」のは平林氏のほうで、稀代のブルックナー指揮者だった朝比奈をここまで貶めることは、
「忠臣蔵には出ても由良之介が演じられない團十郎」と弾劾しているようなもの。斯界の重鎮であり、晩年まで多くの共感者を得た朝比奈に対して無礼である。同ページ
の宇野氏自身の再反論では、見解の相違と判断されたのか、ことさらそれに触れてない。せっかくの宇野氏の著書ながら、不適切で不愉快な異物のような平林評の一節
によって、あまり座右にはおきたくない一書になってしまった。
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