『新品(さらしな)日記』 激笑積据女(げきわらのつみすえのむすめ)

富士の頂きの果てよりも、なほ上つ方まで積みたる人、いかばかりかはポチりけむを、
いかに思ひ始めけることにか、世の中に箱物といふもののあんなるを、いかでポチり
ばやと思ひつつ、積み積むする昼間、よひゐなどに、姉ミチョラ、継母ポチラなど
やうの人々の、その箱物、かの全集、ポチる源氏のあるやうなど、ところどころを
語るを聞くに、いとど欲しさまされど、全ていかでか買ひ求めむ。

いみじく欲せるままに、等身にBOX仏を造りて、リッピングなどして、人まにみそか
に入りつつ、「箱物をとく買はせたまひて、全集の多くさぶらふなる、あるかぎり
積ませたまへ」と、身を捨てて、積み山にもぐりて祈り申すほどに、三十になる年、
ポチらむとて、九十三萬円キャッシングして、犬といふところにて求む。

年ごろ積みなれたる山を荒々しくこほち散らして、立ち騒ぎて、日の入る刻にいと
多く届きたるに、積み据ゑむとて、うち見やりたれば、人まには参りつつ、積み
山にもぐりて祈り申しけるBOX仏の立ちたまへるを、捨て奉る嬉しくて、人知れず
うち笑ひぬ。