天才だと思いますよ。モーツアルトは。

例えば、交響曲25番の第一楽章冒頭の動機とか、パリシンフォニーのモチーフとか、
一度聞けば、たったあれだけの音であの、曲全体を支配するなんともいえないムードを
パッと作っちゃう
オペラアリアにしても、ヴァイオリン協奏曲にしても、これは楽曲全体を
通して言えるのだと思うけど、人工物でありながら、人間臭さがない。
つまり、旋律に生身の人間の吐息が感じられない。
まるで、宝石のように、地中に埋まっている美しい旋律を、ザクザクと掘りだして、
「ほら、こんな綺麗なのがあったよ」と言わんばかりに、音符にしてみせる。
モーツアルトは作曲してるんじゃなくて、鉱脈に結晶している名旋律を掘り出すだけ。
そこには努力とか、研鑽という概念が感じられない。

時代は違えど、例えばヴェルディを見ればよくわかる。
あの音楽は、人間臭い。
初期のナブッコのアリアとか、努力の跡が感じられる。
必死にピアノに向かい、鍵盤を探って、おのれのセンスを振り絞って、
血を流す想いで一曲一曲を作っている。典型的な努力人型ですね。

モーツアルトの音楽にはそういった人工物の匂いがしない。
まったく、空から、天から降ってきたような感じですもの。