「ねじれた駒はちょくちょく修正する」
こんな当たり前のことを知らないレイトがうようよいる理由は実に簡単だ。
不器用だし、理解力がないからだ。
当たり前のことができない人間に難しいことを教えるのは無意味だし、話がややこしくなる。
下手に直そうとして駒を倒し、ついでに衝撃で魂柱が倒れたり表板に穴が開いたりした挙句
「先生の言う通りにしたら壊れました。弁償してください」
などと頓珍漢ないちゃもんをつけられてはかなわない。
伸びる見込みゼロのレイトに余計な労力を割くのは自らの生業としての音楽に対して失礼にあたる、
まともな音楽家ならまずそう考える。
初めて楽器を持った三歳児よろしく「ここはいじっちゃいけません、チューニングも先生がやります」
そう注意して、当人にはヴァイオリンを弾いている気になってもらう。
教師として当然の親心といえよう。