■覚醒剤 ――― 特別なクスリ

 覚醒剤は素晴らしい。
 その圧倒的な力の前では、どんなクスリも色あせて見える。まるで”格”が違う。
 トップはこれ以外にはありえないのだ。うつ、無気力、暗い、内向的、消極的といった多くの
人がなんとかしたくてもどうにもならない性格・タイプも、このクスリはすべて一瞬にして消し去る。
 この抜群の力と奇妙な性質こそが、覚醒剤をまったく特異なポジションに置くことになったのだ。


覚醒剤と言えば「一度手を出したらやめられなくなり、いずれ幻覚・妄想や凶悪犯罪に行き着く」
恐怖のクスリのはずだ。今は第3次ブームだそうで、確かに覚醒剤をやっているヤツはたくさんいる。
なのに錯乱してるヤツとか、覚醒剤凶悪犯なんて全然いないのはなぜなんだ?

実は「覚醒剤=幻覚・妄想・凶悪犯罪」というのは、世界でも日本だけの"常識"なのだ。ヨーロッパ
ヘ行ってドラッグの本や雑誌を見て気づいたが、薬害としての「幻覚・妄想」は「不眠」なんかと一緒
に「やめて数日寝れば治る」と軽く扱われていた。これが欧米の研究者の一般的な見方なのだ。

しかし日本の研究者だけが、「幻覚・妄想は少しずつ蝕まれた脳の致命的な損傷のせい」という独自の
説を主張しつづけて、国際学会でも孤立しているらしい。しかもその説は、50年代のヒロポン・ブーム
の頃、つまり脳のことなど何もわかっていない時代に、特に根拠もなく提唱されたものだ。