『名盤ひしめくベートーヴェンの交響曲全集の中ではひときわ地味な存在に
見えるが、どうして実際に聴いてみると1曲1曲のてごたえの重さは大変な
もので、指揮者のしたたかな力量を思い知らされないわけにはゆかない。
たとえば「第7番」のような曲でも、どんな強烈な演奏にもひけをとらない
豊かな説得力を持っている。ケンペの表現にはおよそ浮ついたところがないが、
録音も含めて音の質が近ごろ流行の上塗り薬で艶出ししたようなそれとは
正反対であるのも、この指揮者のかけがえのない遺産に相応しい。』
(大木正興、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.1交響曲編』1985年)