美は人を沈黙させるとはよく言われる事だが、この事を徹底して考えている人は、意外に少ないものである。

優れた芸術作品は、必ず言うに言われぬあるものを表現していて、これに対しては学問上の言語も、実生活上の言葉も為すところを知らず、僕等は止むなくロをつぐむのであるが、一方、この沈黙は空虚ではなく感動に充ちているから、
何かを語ろうとする衝動を抑え難く、しかも、口を開けば嘘になるという意識を眠らせてはならぬ。
そういう沈黙を創り出すには大手腕を要し、そういう沈黙に堪えるには作品に対する痛切な愛情を必要とする。

美というものは、現実にある一つの抗し難い力であって、妙な言い方をするようだが、普通一般に考えられているよりも実は遥かに美しくもなく愉快でもないものである。