ヴァーグナーのオペラへの愛情は、必ずしも全てのオペラ好きによって共有されているわけではないが、ヴァーグナーのオペラが好きだと言う人間は、たいていほかの作曲家のオペラに満足できない。
ヴァーグナーのオペラが特に無我夢中にさせるような筋立てを持っているためでもなく、登場人物たちが奥行きのある人間として描かれているためでもない。オーケストラの響きと人間の声とのユニークな結合のゆえにである。
(「ついさきの歌声は」ドナルド・キーン著より)