ちなみに、番組中でも天出氏が言っていたように、たしかにこの曲は
歌えるようなメロディはないけれど、一方「弦楽のためのレクイエム」は
まさに冒頭からのエモーショナルなメロディと濃いハーモニーで聴かせる曲だ。
それでいて無調音楽。
武満の本質は晩年「うた」にこだわったことからもわかるように、メロディスト
だと思う。前衛の時代に書かれた地平線のドーリアやテクスチュアズといった
乾いた曲の中に、いかに効果的に情緒纏綿たるメロディが使われていることか。
武満ほどに無調で自在に旋律の書ける人は、他にベルクぐらいしか思いつかない。