ラローチャを私が訪ねたとき、赤坂のホテル・ニューオータニの日の当らないシングル・ルームに
泊っていた。日本のホテルのシングルがいかに狭いかはご承知だろうが、彼女はその部屋にタテ型
のピアノを持ちこんでいたから、まさに坐る余地もない状態だった。それでも彼女は不平らしい顔
もせず、部屋代を払ってもらっていることに満足していた。人柄が謙虚なためである。
(『帝王から音楽マフィアまで』石井 宏)