>>514の記述を補足するために、ちょっと長いけど引用しますよ。

室内楽名曲名盤100 大木正興・大木正純著(1883)音楽之友社
の「ブラームス 弦楽六重奏第一番」から。

ブラームスの弦のみによる室内楽曲は弦楽四重奏曲が三曲、
五重奏曲と六重奏曲がそれぞれ二曲ずつで、
四重奏曲の作品数は全体の半数に満たない。
彼の出発点が古典的な弦楽四重奏曲にあったことは、
みずから破棄はしたもののごく若いころに
おびただしい数のそれを作曲したことにもうかがえるが、
ブラームスは結局そこに留まることなく、より大きな
編成の室内楽へと手を伸ばしていったのである。
その原因は二つあるだろう。
ひとつはロマン派的な響きを求めるとき
弦楽四重奏では透明すぎること、
もうひとつは弦の表現力をベートーヴェン後期の
作品より増大させようとすれば無理が生ずることで、
この二つの問題は表裏の関係にある。

弦楽六重奏曲は五重奏曲と反対に比較的初期の作品で、
1860年作の第一番はピアノ三重奏曲に次ぐ室内楽曲
第二作である。この曲のぶ厚い響きには、
頑固に自己の室内楽の場を確保しようとするブラームスの
室内楽人的体質と、同時に当時オーケストラに
向かって手を差しのべてみたくて、
協奏曲やセレナードで苦心している彼とが共存している。
しかし楽想は平明で構造は非常に明確、
ブラームスの本当の苦労はまだこの作品には現れていない。