☆ カール・ベームの芸術 ☆
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0779名無しの笛の踊り
2010/07/16(金) 17:59:27ID:xa+4hgoTそう、あれは1975年3月22日のことじゃった。NHKホールのこけら落とし公演で、
わしは運良くくじに当たってチケットを数枚手に入れることが出来たのじゃ。
だから16日のベートーベンと19日のシューベルトの公演も聴いていたし、終演
の後の馬鹿騒ぎも知っていた。
しかしあの日は特別じゃった。火の鳥の始まりでは、大太鼓の小さな音のリズ
ムとそれに合わせた低弦の合奏から異様な緊張を感じ、これはただならぬ演奏
になると予感できた。そしてカスチェイ王の魔の踊りの冒頭、巨大な金属音が
ホールいっぱいに鳴り響き、一気に緊張が高まって地べたに踏みつけられそう
になった。しかし子守歌から終曲へと天空に大きな弧を描くような歓喜のうち
に解放されたのじゃった。
そして休憩をはさんで、あのブラームスの交響曲第一番が始まったがじゃ。大
太鼓に支えられた序奏からオーケストラは燃えに燃えていた。第一、第二、第
三楽章と確信を持って進んで行き、第四楽章の序奏に入ったとき、ピチカート
の合奏の厳しい集中のなかで、わしにはオーケストラの演奏者と聴衆一人一人
とのあいだに張られた緊張の糸が見えたような気した。そのあとも緊張と弛緩
を繰り返しながらどんどん圧力が高まっていき、オーケストラにはこれ以上圧
力をかけることはできないところにまで達していった。しかしベームはコーダ
のところで、これでもかというようにさらに強い圧力をかけ、ウィーン・フィルは
それに圧倒的な力で応えて終わったのじゃ。
わしはもう茫然自失じゃった。
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