ジョーンズによれば、1787年にアルタリア社から出版されたヨーゼフ・ハイドンの交響曲集
(82-84番の3曲)に刺激を受けて、同じ出版社から出版するために三大交響曲が作曲された
のではないかという。確かにハ長調、ト短調、変ホ長調という組合せは三大交響曲でも全く同じ
であり、それ以外にも両者には様式的類似が見られる。
また、アルタリア社が1786年に出版したミヒャエル・ハイドンの3曲から成る交響曲集との間にも
興味深い類似点が見出される。第1曲が変ロ長調、第2曲がニ短調、第3曲がハ長調という組合せは、
調性こそ違うが、第1曲が♭系の長調、第2曲が第1曲の属調の平行調になっているという意味では
三大交響曲も同じであり、第1曲の冒頭楽章のみに序奏があり、第3曲の終楽章がハ長調の長大な
フガート楽章(ソナタにフーガを導入した形式。K.551も同様)になっている点も
全く同じなのである。フガート楽章で曲集全体を締め括るというやり方は、
ヨーゼフ・ハイドンの前述の曲集では見られない、ミヒャエル・ハイドンと
モーツァルトの注目すべき共通・類似点といえる。モーツァルトは三大交響曲の作曲に当たり、
アルタリア社の好みに合うように、ヨーゼフ・ハイドンの曲集だけでなく、
このミヒャエル・ハイドンの曲集も参考にし、強く影響を受けている可能性がある。