そうそう、レクイエムで珍品と言えばジュスマイヤー(1766-1803)の
レクイエムがかなり良かった。数年前レコ芸の海外盤試聴では
魔笛のアリアを思わせる部分がある、というような評が書いてあったが、
実際聴いてみれば分かる通り、それはかなり疑問。
このレクイエムで注目されるのは、従来通りのラテン語ではなく、
ドイツ語のテキストに付曲されていること。音楽自体もイタリア音楽
の影響から急速に遠ざかり始めていて、民謡調の清楚・素朴な美しさをもつ合唱は、
ドイツ語圏のフォルクステュームリヒェスリートの流れや、
18世紀末からのドイツ語圏の加熱する民族主義を想起してしまう。
ジュスマイヤーはヴィーンの宮廷でジングシュピール部門の楽長になるなど
人気作曲家だったが、18世紀末に、作風を従来のイタリア風から大幅に変化させた
と言われている。それは彼個人の内面的問題というより、音楽趣味の変動に
敏感に反応した結果だろうが、このレクイエムも変化後の作風と言えるように感じた。