着席して、コンサートが終わって席を立つまでの約2時間、
ただひたすら文庫本を読んでいた男がいた。演奏中は客席が暗く
文庫本の字は読みにくいと思うのだが、ひたすら読んでいた。
休憩時間もひたすら読み、後半のプログラムが始まっても
ひたすら読んでいた。演奏前後の拍手もせず、ただ読んでいた。
両隣の人たちはさすがに気になったのか、しきりにその男の様子を
伺っていた。楽章ごとに盛大に手を叩くオバサンたちより不気味な
存在だった。