(3) 音楽技術に対する劣等感
小さい頃から楽器を習ったり、飛びぬけたセンスがあったり、一定
以上のレベルに属する音楽大学出身者であったりすれば、一般のア
マチュアオーケストラ程度では足を引っ張ることはまずない。
しかしながら、一般大学の大半を占める弱小オーケストラ出身者や、
さして練習意欲のない大半の吹奏楽部出身者、あるいは社会人にな
ってからオーケストラを始めた人間に関しては、オーケストラでお
荷物扱いされるケースが目立つ。その割に、社会的地位が高く、年
収もはるかに高い、場合によってはオーケストラ歴や年齢までもが
高いという状況はしばしば起こりうる。それなのに、音楽大学出身
者や名門学生オーケストラ出身者の若手に音楽レベルでは全くかな
わず、苦渋の時間を過ごさざるを得ない。
プライドを傷つけられた彼らが、その後の飲み会で爆発するのは自
然な行動といえる。音楽レベルが低いほど、社会的地位が高いほど、
薀蓄がひどいのは言うまでもない。かといって、暴力や暴言はエリ
ートとして恥ずべき行為となれば、向かう先は自負すべきインテリ
ジェンスに頼った音楽薀蓄しかない。自分はエリートだから音楽に
関する造詣なら負けない、経験年数では上回っているから理屈では
上位にあたると妄信しつつ、ひたすらに語る。しかし残念ながら、
その薀蓄のほとんどは音楽レベルの高い人間にとって戯言でしかな
く、ますます溝は深まってゆくのである。