パリ国立オペラの「トリスタンとイゾルデ」 2008年07月27日22:20

 今日は渋谷のオーチャードホールでパリ国立オペラの「トリスタンとイゾルデ」。1F前から3列目のほぼど真ん中の最高の席。S席でもいろいろあるから、今日はラッキー、と思いきや、舞台上の演出の大部分を大きなスクリーンに映し出される映像に委ね
てしまい、長椅子とも台ともつかないものがひとつある以外は舞台装置なし。歌手たちにはあまり演技をさせないという演出のため、舞台を観るのに最高の位置のメリットはあまりなし。

 映像表現に依存する演出というのはローコストのオペラ上演のため、また、歌手に余分な負担をかけないことのためには有益で賛成なのですが、大部分が劇のストーリーとは関係ないイメージが映し出される今日の映像では、オペラ鑑賞の邪魔になる
だけです。映像作家がこのオペラから得た個人的なイメージを独自創作の映像にして見せているだけです。彼のメッセージが記載された紙が配役表といっしょに配られましたが、そこに曰く、「ありのままのストーリーを描写したり表現したりするような映像イ
メージを創りたいとは思いませんでした。」 だったら、よそでやれよ、と言いたいです。原作者のト書きをできる限り忠実に舞台上に表現するのが演出家の役割です。自分勝手な創作を付け加えるのは原作の改竄であり、場合によるとパロディです。

 ビシュコフ指揮のオーケストラはテンポを頻繁に揺らして劇的な表現を狙っているようでしたが、音の輪郭がはっきりせず、聴こえてくるはずのモティーフや旋律が聴こえてこないところがたくさんあって欲求不満を感じました。雑なんですね。隅から隅まで明
瞭なラトル指揮ベルリンフィルのワーグナーを聴いてからまだ1ヶ月たってないからその残像が耳に残っているせいかもしれません。それでも、3幕のトリスタンが苦悩する場面から死に至るまでの表現力は秀逸。