ある日スターリンは「昨晩、ラジオでマリア・ユーディナによるモーツァルトの
ピアノ協奏曲第23番のレコードを聴いたのだが、気に入ったので、私の別荘に持ってきてくれないかね」
と放送局に連絡した。本当はスタジオからの生放送だったのだが、関係者は「ありません」と答えられず、
急きょ関係者が呼ばれレコーデイングされた。指揮者は恐怖と緊張のあまり演奏できず三人も変わる始末で、
ようようにして録音が済まされ翌朝スターリンのもとに届けられた。このレコードは、スターリンの死の時に
プレーヤーに載ったままにされていた。

マリア・ユーディナは、スターリンからモーツァルトの協奏曲のレコード吹き込みにいくばくかの謝礼を受け取った。
だが、ユーディナは「この金を圧政に苦しむ人たちのために使ってください」という内容の手紙とともに送り返した。
ユーディナの破滅は明白であった。だが、手紙を読んだスターリンは、テーブルに手紙を置いたまま何も言わなかった.。