カスタマーレビュー

狙いはわかるが、不満な内容

そもそも対位法の教科書にパレストリーナ様式なるものが伝統的に取り上げられるようになったの
は、J.J.フックスの有名な教科書に起因すると思われる。非常に有名な教科書なので盲目的に崇める
人もいると思うが、フックスの教科書はあまり良くない。多分フックスはパレストリーナの作品を
よく知らなかったのであろう。

彼は、1音対1音、2音対2音、4音対1音、シンコペーション、などという分類を採用したが、そも
そもこうした分類が既に現実の芸術作品とかけ離れてしまっているのである。優れた芸術作品にこ
のようなワザとらしい分類から成り立っているものは皆無であろう。だが、残念なことにフックス
による分類法はその後も踏襲され、有名なK.イェペセンの教科書にも受け継がれた。日本でも多く
の教科書が同じ愚を犯している。

この本は歌詞を取り扱っていることと、パレストリーナの旋律について一応の考察を試みている点
で評価できる。ただ、著者による作例には疑問な箇所も多いし、そもそもこのような分類による作
品がパレストリーナにないので、果たしてこの本でパレストリーナ様式の何が学べるのか疑問であ
る。

もし、ルネサンスの様式で対位法を学びたいのなら、「古典純粋対位法」(サルヴァトーレ・ニコロ
ーシ著、音楽之友社、1997)がお勧めである。