>>273
実はその『清教徒』、カラスの録音の中でも一番オススメできない盤だと
個人的には思ってるんだが…。カットが大杉でベッリーニの曲の良さが
全然活きてこないしドラマの進行にまで支障をきたしている。何より
閉口したのはエルヴィーラの狂乱の場までズタズタにカットされてる事。
カバレッタのダ・カーポ部分やカデンツァまで無しなら一体何の為の
狂乱の場だか分かりゃしない。カラスの歌に対する態度のストイックさ
(無駄な音は一音だって歌いたくないという主義)が裏目に出た結果か
(これについては同じセラフィン指揮の61年のライヴにおけるサザランドも
ここまで徹底はされてないとはいえ矢張り同じようなカットで歌ってるから、
セラフィンの方針も勿論あるだろうが)。
それに何よりこの頃のカラスの声はエルヴィーラを歌うには重すぎた。
例のチェトラのスタジオ録音の『椿姫』(これまたサンティーニの鈍重な
オケ運びと相乗されてまるで喉に重りでもつけているかのような歌唱)といい、
こんな一番声の重い時期に何故こんな録音を残したのかといいたいなあ。
後期ヴェルディやヴェリズモの調子でベルカントを歌う事の短所が見事に
形になって現れた歌唱。ディ・ステーファノのアルトゥーロにしても然り
(この人の場合役に求められる超高音を完全にスルーしてるからハッキリ言って
"歌えてない"んだが)。もう2、3年後にレッシーニョ辺りを指揮に、ゲッダを
アルトゥーロに据えて録音をしてたら、また違う出来のものになったんじゃ
ないかなと思うんだが(人が言う程セラフィンはベルカントの様式に明るい
指揮者じゃなかったように思える。この人の本領はやっぱり中期ヴェルディ以降)。