ベーム。
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 ベームの指揮できくとオペラ、楽劇があんなにおもしろく
きこえるのは、だから、こういうルティーヌに通暁している
一方で、しかし、凡庸な指揮者とちがって−そういう人もい
ないと世界中のオペラ劇場はなりたたなくなってしまうのも
確かだが−、それに妥協して水準の低い演奏で満足してしま
うのではなくて、そういったたくさんの弱点を徹底的に知り
ぬいていながらも、どうやればその条件の中でいちばんよい
ものに近くもってゆくことができるかをもとめ、そうして、
そのためには妥協をしない精神の持ち主で、彼があるからで
はなかろうか。


 吉田秀和「ベーム」〜『世界の指揮者』新潮社