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 とにかく、あらえびすのフルヴェン評価を読むと、この作家、只者
ではないんだよ。

 フルトヴェングラーがBPOのコンマスだったユダヤ人ゴールドベ
ルクの慰留に努めたり、ナチスの攻撃からヒンデミットを擁護した件
を既に知っていて、戦後のナチス粛清裁判でようやく明らかになっ
た「フルヴェンはナチス協力者でなく、職を賭してナチスから音楽を
護った功労者である」ことを(日本の検閲当局を怒らせないギリギリ
の範囲内で)いち早く指摘している。
 ドイツから帰国してフルヴェンの生演奏を聞いた人たちから細大
もらさず情報を聞き取り続けている。執筆の13〜4年前から情報
収集を続け、「ベト5を振って本当に人を泣かせるのはフルヴェンだ
けだ」という情報もキャッチしている。
 戦後、EMIがベト2番の音源を捜し続けて、ようやく発掘して完成
した「フルヴェン指揮ベト交響曲全集」も、既に日本ポリドール社を
通じてドイツ本国に全曲録音の提案までしている! (実現はしな
かったが。実現していたら、あらえびすはもはや神だ。)

 こういう、フルヴェンについての綿密な情報収集力と極めて的確
な判断力を駆使して、彼が30代ですでに「巨匠」の一人と呼べる存
在であったこと、同じ年頃の他の指揮者からは(そして年上の世代
の巨匠たちと比べても)頭ひとつ抜きん出た存在であったこと、を看
破したんだろう。