吉田秀和のいささか長い一文をそのまま引用すると

「ベームのドイツ語は、オーストリアの
どこの訛りか知らないが、学校で教わり、ラジオやテレビで普通にしゃべ
られているきたドイツのいわば標準ドイツ語とはひどく趣のちがうアクセント
をもった言葉であり、そのうえに、しゃべり方に、何というか、何の魅力も
なく、ただもう教養も何もない人間が地方弁でガミガミいっているような
調子なので、その話し方、怒鳴り方と、さっきいった内容と、この両方を
合わせてみるとこうやってしぼられる楽員のほうもたまるまいし、
ときには、それこそアクセントのつけ方からフレージングまで音をだすたびに
いちいち直され、あれでよく覚えていられるものだなと、同情してしまう
場合もあるくらいだ。」

東北訛りのおやじが下品な物言いで音をだすたびに文句をつける
姿を想像した。 この人は「芸術家」というより、「職人」なんだと
思う。