中学生の頃、クラスにWさんという女の子がいた。
彼女は先天的な病気で全身の皮膚がただれていて、声もうまく出せなかった。
大人しい子で、いつも白いカバーをつけた文庫本を読んでいた。
男子の友人はいなかったが、女子の友人は不思議と多いようだった。
     
修学旅行で旅館に泊まった時、友人が女子の部屋に遊びに行こうと言い出した。
俺も同意して、どうせだからこっそり行って驚かせてやろうってことになった。
そしてクラスで一番人気のあった女子のいる部屋に行く事にした。
こっそりドアを開けると(どのように鍵を開けたかは忘れた)異様な光景が。

体育座りで顔を伏せたWさんをぐるりと囲むようにクラスの女子全員が立っていた。
そして、Wさんに向かって「豚」「ヤケド野郎」などと罵声を浴びせていた。
さらにクラスで最もかわいかった子が「じゃあ、カツラはずしまーす」と笑いながら言って
Wさんの頭に手を伸ばした。

次の瞬間、Wさんの髪の毛が全部その女の手にあった。
Wさんは頭皮も病気で、髪の毛が生えないためカツラをしていたのだ。
男子は誰もそれを知らなかった。ショックで何が何だかわからない俺の前で
女子はWさんの頭や背中を蹴飛ばしたり、カツラをライターであぶったりした。
Wさんはかすれた声でうめく。助けを呼びたくても呼べないのだ。
俺と友人は無性に怖くなって見つからないように逃げ戻った。

次の日、Wさんもクラスの女子も何事も無かったかのように京都を観光していた。
それが一番怖かった。

何年か経って同窓会が開かれた。Wさんはすでに亡くなっていた。
俺は思い切って女達に修学旅行でのことを聞いてみた。
すると例の一番かわいかった子が「あんなの別に死んだっていいじゃん」といった。


「精神性」という言葉を聞くたび、俺はこの一連の出来事を思い出す。