確かに70年代からのリヒターは、凝縮力が希薄になった感は否めない。
これは晩年のカラヤンにも言える。カラヤンの場合は身体の衰えがそうさせたと思うが、
リヒターの場合は何故そうなったのだろうか?
よく言われる事は、古楽器演奏が主流になりつつあったので、自分の演奏様式に迷いを
感じたからだろうか。また失明寸前の目の手術をし、それに伴う体力の衰えなどから楽
譜を読む事が以前より困難になり、精神的にも変調を来したようにも思われる。

70年代のリヒターの変化はともかく、50年代60年代のリヒターの演奏は、古楽器主流と
言われる現在でも、色褪せる事なく確固たる位置を占めていると思う。いz
さらに言えば、もうそろそろ「バッハをはじめバロックの演奏は、古楽器で再現するのが
正しい」という主張から抜け出してもいいのではないかと思う。
∵バッハは、シンセサイザーをはじめジャズでも琴でも、またアフリカのドラムでも演奏
出来る懐の深さがあるから、現代楽器でも良い演奏ならばどんどん演奏すべきだと思う。
(あるオーケストラのメンバーが、「自分たちもコンサートでバッハなどのバロック曲をプ
ログラムに入れて演奏したいが、古楽器主流の今はそれが出来ないので寂しい」というよう
な事を言っていた。)