文豪ゲーテと同年生まれの作曲家フォーグラー(1749-1814)による
「レクイエム 変ホ長調」(1809完成)を初めて聴いた(アルテノヴァ盤)。
ん〜〜これは仰天の音楽!!
この曲を未聴で、新鮮な印象を楽しみたい人はネタバレに注意してね。

冒頭から驚かされる。あれれっ、これがマンハイム楽派の一員だった人の
宗教曲??? ルネサンス期の様式を回顧した1840年代の曲みたいに
聴こえる。そう、この曲には古典派時代に欧州中を席捲したナポリ派らしき
要素が殆んど感じられない。
古典派の作品というのが信じられない破格の音楽。
敢えて言えばドイツロマン派な響き。だが、それだけでは全然捉えきれない
独創性が随所に溢れ、声楽と器楽の掛け合いの大胆さも全く古典派離れしている。

どこかで、フォーグラーのレクイエムは冗長で退屈という素人愛好家の評を
見た記憶があり、ああ、よくある甘く散漫な古典派風ね、と予想していたが、
見事に予想を裏切られた。この作品は冗長どころか、むしろ
その対極にあるような音楽。
近い時代なら、ケルビーニやベートーヴェンのある種の作品
に感じられる異様なまでの集中力・緊密さがこの作品にもある。
加えてこの曲にはロマン派的美学による中世懐古趣味的な妖しい美しさ
もあるかな。

現代では有名な某作曲家が、この作曲家を酷評したことは
結構知られているが、その某作曲家の鑑識眼の程を心底疑わせるに足りる
衝撃の傑作だった。「バイエルン愛国交響曲」(1806)の復活録音も是非期待したい。