第701話 白百合の里(7月26日)

7月26日(木)。締め切りを3ヶ月近くも遅れていたドイツ語論文をやっと書き上げた私は、O助教授の車に便乗して、恒例の学科合宿に向かいました。目的地は相模湖の近くです。
ひじょうに長い名前のペンションが、宿泊先になっている。前半がフランス語、後半は英語と日本語を組み合わせたその名前は、
ふつうのペンションのゆうに2軒分の長さ。愛称を「白百合の里」と言い、屋上にはモーツァルト広場と露天風呂があるそうです。ぎっしり宣伝文句の書き込まれたそのチラシは、
期待というより、妙に不安を抱かせるものでした。

帝京大学薬学部の巨大な校舎を過ぎ、これからの人生で、報道陣にもみくちゃにされてメガネが飛ぶ、という目にだけは遭いたくないなあ、などと考えていると、道ばたに、荒れ果てた塔のような
建物が立っていることに気づきました。まさかと思って目を凝らすと、それが、かの超長い名前のペンションなのです。

入り口は雑然としていろいろなものが散乱しており、その中に、犬がつながれている(のちに、白百合にちなんで「リリーちゃん」という名前であることが判明)。ちょっと離れたところには、
ヤギだのウサギだのがたむろしています。案内されて螺旋階段を上がっていきましたが、どうも掃除したことがないようで、
あちこち散らかっており、べとべとしている。なんとも不潔なペンションです。