朝刊にU氏の感想が載ってたので転載します。タイプミスあったらスマソ。
アーノンクールのブルックナー(上)

ぼくは、アーノンクールが作り出す音楽にいまひとつ馴染めずにいた。
それはどこか彼の音楽に、人工臭を感じずにいられなかったからだ。
ベートーヴェンにしろ、モーツァルトにしろ、まったく魅力を感じない。
威嚇するようなフォルテ! モーツァルトが悲しんでいる気すらした。
ブルックナーも同様で、金管がうるさすぎたりして、ブルックナー特有の神々しさが消し飛んでしまうのが常だった。

最近、ぼくの周りではアーノンクール、アーノンクールと騒ぐ人がずいぶんと増えた。
わざわざ、海外まで聴きに行く人がいるほどだ。
そういう人たちは口を揃えて「アーノンクールは変わった」と言う。
折しも、今年のウィーン・フィルの来日公演はアーノンクールが振るということなので、思い切って聴きに行くことにした。
ぼくはCDだけで演奏家を判断しないように気を付けているが、近頃はコンサートに行くのも億劫になってきた。
なかなか気がすすまなかったが、周りの勧めもあり、サントリーホールまで足を運んだのだった。

演目はブルックナーの5番。ぼくは7番よりもこちらを好む。
終楽章の大フーガなど、ブルックナー以外には決して書けない音楽だろう。
アーノンクールはウィーン・フィルとCDを出していて、それはまったく感心しなかったが、実演はどうなのだろうか?
こんなに聴く前に不安な気持ちになるコンサートも珍しい。

そんな事を考えていたらアーノンクールが出てきて、演奏が始まった。
その瞬間、ぼくはのけぞった! なんという深淵なひびき!
常に外面的な音楽を演奏してきたアーノンクールだったが、ここに来てついに、精神性を獲得したのだとぼくはすぐにわかった。
ピアニストではアラウやルービンシュタインがいるが、指揮者でこれほど大きな変化を遂げた例はぼくは知らない。
強いて挙げるとするならばヴァントだろうが、アーノンクールの様な人間がこうも純真な音楽するとは!
ぼくは本当にたまげてしまった。
(下に続く)