一方のFM放送は、アーノンクール指揮による「フィガロの結婚」。こちらは、仕事移動中の車などで聴いていたので、断片的な形での聴取。
とにかくまぁ、一筋縄では行かない御仁でありますから、演奏も聴き慣れた「フィガロ…」とは一線を画すものでありました。
解説者も再三に渡って触れていたけれど、テンポ設定が極めて独特>全体的に見れば「遅め」。歌詞の意味を十分に検討・考慮した結果によるものだそうだが、
説得力あるなと思わされた部分と、どうなんだろ?と思った部分、両方あったね。前者の例としては、ケルビーノの「恋とはどんなものかしら」。
通常は曲の流れの中で何気なく進んでしまう管楽器陣の和音進行が、実に丁寧かつ丹念に"具体化"されていて、この曲が単にきれいなだけでなく、
意味深い音楽なのだということに気付かせてくれる。この辺は面目躍如。一方で、頭の中の「フィガロ…」のイメージが"疾走系"によって形作られてもいるせいもあり、
もっとグングン前に押し進めてくれた方が曲の雰囲気が出るのに、と思わされた部分もあった。オケも最初はやや戸惑い気味。
でも、曲が進むに連れて響きが収束して行ったから、終わってみれば充実した演奏。演出も面白いものだったようだから、会場で見聞した人は、きっと満足度高かったろうと思う。
この「フィガロ…」の"目玉"はネトレプコのスザンナだったようだが、うーん、どうなんだろ。とにかく「立派」な歌唱だったけど、
私、個人的にはもっと「自在」な歌い方の方が好きなのね、ことこの役に限っては。だから、私の"スザンナ像"とは距離のあるもので、その点やや違和感。
というか、彼女に限らず、今回の歌手陣は総じて「立派な歌唱」系。もちろん演奏もガッチリ組み立て系だから、全体的に、とにかく「立派」。
これはこれで意味ある音楽的成果だとは思うのだが、私としては、1幕から4幕まで一気呵成に突き進むっていう"軽量級"「フィガロ…」もまた大変魅力的。
歌手もオケも指揮者も、ちょっと肩の力を抜いて、自身が楽しみつつ演奏していく「フィガロ…」。これはこれで非常に楽しいのであります。