「…史上に名を残す女性作曲家は、フランスのタイユフェールくらい、それ
も知らない人の方が多いカゲのうすい存在です。
 ゲオルク・グルントヴァルトというドイツの心理学者は、こういう意味の
ことを言っています。女性は抽象的なものを嫌悪する。また女性は受動的で
あり、依頼心が強い、学問するにも暗記を一番得意とし、日常生活では既成
道徳に従う傾向が強い。相当偉い聡明な女性でも、男性に比べてはるかに
党派的である。
 (中略)
これでは常に革新的な精神を必要とし、おのれ自身を賭けた冒険をしいられ、
しかも抽象的な作業に従事する作曲家には、全く不向きといわねばなりま
せん。やっぱり、女はだめなのです。悪しからず──。」

芥川也寸志『筑摩教養選16 音楽を愛する人に わたしの名曲案内』筑摩書房(1971)
「オネゲル 火刑台上のジャンヌ・ダルク」より抜粋