ばらの騎士はウィーンを目指す

それまでワグネリアンを貫いてきたリヒャルト・シュトラウスでしたが、
ここへ来てその作風に大きな変化が見られます。それが世にいう「モーツァルト
還(がえ)り」です。
そもそも熱烈なモーツァルティアンだった父の影響を(かつては)受け続けていた
リヒャルトでしたから、青年時代に感化されたワグナーの強烈な魔力の影響も次
第に薄まってきたある時、かつてのモーツァルト趣味が突如として復活したのか
も知れません。
その事を強く実感させる作品こそは、今回ご紹介する楽劇「ばらの騎士」です。
この作品は20世紀オペラの最高峰として、さらに全オペラ作品の中でも屈指の名
作として現在でも頻繁に、かつ定期的に上演され続けている名曲です。

リヒャルト・シュトラウスの名前を知らない人でも「ばらの騎士」は知っている、
というほどの曲と言われていますが、実は私も実際そういう人に会ったことが何
度もあります。山田耕作を知らなくても「赤とんぼ」は知っていると言えばお分
かりいただけるでしょうか。
しかしただでさえ難解な(と思われている)はずの現代音楽、しかもオペラ作品でありながら、
どうしてこれほどまでにポピュラーな地位を確立するに至ったのでしょうか。
その秘密はまず第1に物語りの舞台にあります。そして第2に衣装と舞台装置。つまり見た目の印象
(とストーリー)が大いにモーツァルト風で、それだけ分かりやすい作品になって
いるといえます。
こうして立派にモーツァルト還りを果たしたリヒャルト・シュトラウス。
具体的には「フィガロの結婚」を20世紀に蘇らせたとして当時は大変な評判にな
りました。もちろんそのことが多大な収益性を呼んだことは事実ですが、それで
も他の人にこの真似ができたかと言われると疑問が残るのではないでしょうか。