ヴェデルニコフのテンペストを聴いていると、
知らず知らず、涙があふれてくる。
かすんだ視界の彼方に、私は、この世に生を受けるより昔の遠い日々の、
喜び、怒り、哀しみ、そして楽しんだ無名の人々の、生の軌跡を見る。
しかしそれは、北欧の鉱山の奥底にある地底湖で溺死した若者が、
数十年たってから、腐敗もせずまるで生きているかのような姿で
発見されたものの、いざ水中から引き上げられると、
まもなく粉々になって崩れ落ちたという実話のように、はかない。
人生のはかなさを、ヴェデルニコフのベートーヴェンに見出だした者にとって、
彼の奏でる音楽は、かけがえのない慰めとなろう。