>>483
ギーゼキングの熱情はエキサイティングな演奏だね。

ふだんは昆虫採集なんかに熱中して、初期のソナタではおおらかで純朴
ともいえる演奏をするのに、熱情では豹変して魔神になった。
初めて聴いた時、震えるほど感動して泣いたよ。
内田光子は「ギーゼキングは理解できない」と言った。

グールドはベートーヴェンには否定的で、熱情は空疎で中身のない音楽
とまで言い放った。でもソナタ第5番をレッスンでやった時にはグールドが一番
参考になった。アシュケナージなんかとは比較にならないほど、曲を理解し、
彫琢している。愛情の裏返しなんだよ。
だが、グールドのベートーヴェンは癒しの音楽ではない。
彼が本領を発揮するのはやはりバッハ。

ケンプのベートーヴェンは、技巧がないと誤解されがちだが、そう思う人は
第29番ハンマークラヴィーアの最終楽章を聴いてご覧なさい。びっくりするよ。
ギレリスよりも凄い。
心霊が乗り移ったような、ただならぬ霊気が漂っている。