BPOがアバドの後任を選んだ時、最後はラトルとバレンボイムの一騎打ちに
なった。
団員投票の結果は真っ二つに割れ、数度の会議を経て二度目の投票の結果、
僅差でラトルが勝ち、後任に選ばれた。
ラトルとバレンボイムで割れているという話を知った時、俺はおそらく
最終的にはラトルに決まるだろうと思った。
BPOは伝統的に一度選んだ監督を短年でころころ変えることはしない。
長く付き合えるのは歳の若いラトルのほうだと考えるに違いないと思った。
それともう一つある。
この観点で見た批評はほとんど目にしなかったが、レコードビジネス面。
BPOはカラヤンのおかげでレコードビジネスの旨味に散々あやかってきた。
そんなBPOが「ラトルとバレンボイム、どちらがレコードビジネス面で
旨味があるか?」を考えなかったはずはない。
ラトルはEMIのイチオシ若手アーティスト。
録音のギャラが高く、レコード会社から録音の仕事が減ってきている
BPOなら、会社も大きく、また会社が売り込みに力を入れているラトルと
組むほうが、録音の仕事が増え、より大きな旨味があると考えるだろうと
俺は予想した。

結果は予想どおりだったが、それでも団員の半分はバレンボイムに投票した。
若さの点にも利益の点にも旨味の少ないバレンボイムに、オケの将来を
託しても良いという票を。
この「声なき声」こそが、ドイツでのバレンボイムの評価を端的に
物語っていると、俺は感じている。