父・辻井孝談

今伸行にいいたいのは、オリジナルな存在になることの厳しさです。
演奏を聴いてくださるファンの方々は、何も演奏家が全盲だからとか
性格がどうだからといって聴いてくださるわけではありません。
皆さん、それぞれの人生のなかで、音楽を心から楽しみたい、
音楽で癒されたいと思って聴かれるのです。
だから、コンサートのチラシなどに「全盲の」と書かれているうちは
まだまだなのかなと思います。
注目は浴びても、それが本物とはいえないでしょう。
伸行には、この世に生まれてきてよかったと思える人生を歩んでほしい。
そのためにも、ぜひオリジナルな存在になってほしい。
今ではそれが、私自身の夢でもあります。

〜辻井いつ子著「今日の風、なに色?」より〜