今戻りました。いやあ凄い。ある意味現在の,そして歴史上の最高の演奏が目前に繰り広げられている現場に立ち会った気分
意外にも猫背で前かがみになって大きく体を揺らしながら弾く様は,昔のショパンのマズルカを弾いている神童時代とは大分
印象は違いましたけど,間違いなくキーシン(当たり前)。

ピアニニニシモからフォルティティ・・・・・シモまで自在に操り,大きく円を描くような音の流れに乗って,楽譜から今作曲されたばかり
かのような夢幻の世界が広がっていた。普通ならあっさり通りすぎてしまうようなところも,一々考え,噛みしめて,これ以外ないと
いうぎりぎりまで音をためて自分のイメージを強靱に現実のものにしてしまう凄味
 過去のCDでは,シューマンの交響的エチュードの演奏で見られるような全力投球,完全燃焼の演奏が次々と繰り広げられました。

 座ったとたんに始まったベートーベン,スケルツォの2番でちょっと気負いすぎて少し音を外したせいか,拍手もそこそこに始まった
新境地を行くスケルツォ3番の爆演
綿密な設計で大舞台の大団円を見たかのようなスケルツォ4番
と,ちょっと曲的に偏りすぎているかと思った当初の印象は粉々に粉砕されました。

アンコールは,第一曲は知らないが深い祈りを思わす絶品(シマノフスキー?),2曲目のショパンのエチュードでは最高のスリルの
演奏で最後の連打が終るとキーシンの体が一瞬浮き,聴衆も思わず爆発的拍手。
この後,次第に女性客のスタンディングオベーションが各所でちらほら始まる。
3曲目がリストのハンガリー狂詩曲の一つでグリッサンドの連発の曲芸の息抜きをした後は,ショパンの有名なワルツ。
浮遊するような不思議な美音で連ねられ,消え入るような音でほとんど無音の奇跡とはこのことか
 これで終わりかと思えば,最後に超絶の小犬のワルツ。
 お隣のこれも一人で来ていた女性も立ち上がり頭上で大拍手の連発
 何でクラシックは,体をぴくりともしないで,座ったままの同じ調子の拍手ばかりなんだ,と思っていたけれども,今日ばかりは
皆座っていられなかったみたい。遂に最後に明るくなるまで立ち上がれなかった自分が情けない。
こんな大舞台で,じっくり聞いてもらって,これ以上ない形で喜んでもらえる,演奏家の理想のコンサートが見られて幸せでした。