当時ローマ字を習いたてだった僕は、ローマ字の読み方しか知らなかったため
 『CHOPIN』がショパンと読むことなんてつゆ知らず。
 「えーちゃうわー!これちょぴんやん!!習ったもん!」
 だんだんムキになってきた僕は、自分が習ったローマ字の知識が否定されているようで
 悲しくなってもきました。
 「え、ごめんね、ごめんね」
 綺麗な先生がアタフタして謝っているのに、僕は半泣きでムキになっていました。
 「ちゃうもん、ちょぴんやもん!!」
 そう言って、僕はレッスンルームを飛び出しました。
 「え、ちょっと!ユウくん!」
 そんな声が後ろから聞こえました。
 次の週、レッスンにはいつも通り、A先生がいました。
 あの美人の先生から何か告げ口されてるんじゃないかとヒヤヒヤしていました。
 「あ、ユウくん、先週来て下さった先生どうやった?」
 A先生がそう言っても、
 「うん」
 としか答えられませんでした。
 「あとね、あの先生がね、ユウくんに『ごめんね』って伝えてって」
 A先生はそう言いました。
 僕は、恥ずかしくなりました。
 A先生は「何かあったん?」とおっしゃっていました。
 僕は泣くのをこらえて、「なんでもない」と答えました。
 僕はあの先生に『ごめん』と謝りたくて謝りたくて仕方がありませんでした。
 あの一日かぎりのレッスン以降、その先生と出会うことはありませんでした。
 向こうはもう覚えてないと思うけど、僕にはほろ苦い思い出として
 心の中に燻りつづけています。
 先生、ぬるぽ。