1980年頃、エリス・マックとの電話インタビューから

Q:あなたのお考えでは、レコーディングに関して一番素晴らしい出来栄えの
ものは何でしょう?

私のカタログ全体の中でお気に入りのレコードというと、バードとギボンズの
音楽のレコードだね。
それは何よりもまず、音楽として、私の心にとても近いんだ。
私はいつも、ヴァージナルのための音楽を──つまりテューダー時代のすべての
音楽を──心から愛してきたんだ。
そして、ありがたいことに、私は、クラヴィコードのようにではなくても、
ほとんどハープシコードのように響かせることが出来るピアノを持っているんだよ。

Q:そのレコーディングを選ばれるとは不思議ですね。ふつう、グレン・グールドと
 言えば、シェーンベルクやバッハが浮かぶんです。あなたはご自分がこれらの
 作曲家のスペシャリストだとおっしゃいますか、それとも、どんなレッテルも
 貼られない方がいいですか?

そういう分野が問題となったときに、私にスペシャリストというレッテルが
はられるのは、一向に構わないよ。
だけど、次のことは思い出してもらう必要もあると思うんだ。
私が、モーツァルトのすべてのソナタ、ベートーヴェンの大半のソナタを
レコーディングしたことをね。
それにもちろん、ベートーヴェンの協奏曲全部、ヒンデミットのかなりの
作品、また、プロコフィエフやグリーグやビゼーやスクリャービンなどなども。
最後に、ごく最近のことだけど、シベリウスのアルバムをレコーディングしたよ。
彼は、ピアノのための曲をうんと書いているけど、その大半はまったく何の
価値もない代物だ。
でもそれらの中には、実に優れた作品がいくつかあるんだよ。
私がレコーディングした三曲の「ソナチネ」はこのカテゴリーに属していると思うね。
…(後略)